感染症胃腸炎

感染性胃腸炎(胃腸風邪)とは

感染性胃腸炎(胃腸風邪)とは胃や腸に起こった炎症が原因で、嘔吐、腹痛、下痢などの消化器症状が起こる病気を胃腸炎と呼んでいます。胃腸炎の中で、主にウイルス感染と細菌感染によって生じるものを感染性胃腸炎と呼びます。感染性胃腸炎は、ウイルス性と細菌性に大別されます。

感染性胃腸炎は病原体に汚染された飲食物や水などを介して感染します。主な症状は、吐き気・嘔吐、下痢、悪寒・発熱などとなっています。細菌性胃腸炎は抗生物質による治療が有効な場合がありますが、ウイルス性胃腸炎には抗生物質による効果が見込めません。なお、ウイルス性胃腸炎の多くは自然治癒が期待できます。
感染が疑われる場合には早めに医療機関を受診して適切な治療を受け、感染を広げないための対策をしっかり行いましょう。
感染性胃腸炎の予防には、正しい手洗いをこまめに行う、食品の適切な取り扱いと加熱処置、清潔な飲料水の摂取、感染者との接触回避などが有効です。

感染性胃腸炎になる原因

感染性胃腸炎になる原因主に病原体に汚染された飲食物や水を介して感染します。ウイルス性の胃腸炎では特に感染力が強く人から人に感染することがあり、家庭内感染も起こしますので、注意が必要です。不適切な飲食物の取り扱い、不衛生な環境、感染者との接触などは感染の高リスク要因です。
感染性胃腸炎が疑われる場合、食べたものを思い出してみましょう。多くの方は当日や前日の食事を原因と考えますが、1週間程度前の食事も原因となることがあります。ウイルス性胃腸炎では、症状が出るまでの期間(潜伏期)が1-3日、細菌性胃腸炎では1週間程度かかることものもあります。

感染性胃腸炎の種類

感染性胃腸炎は、主に、ウイルス性胃腸炎と細菌性胃腸炎に大きく分けられます。

ウイルス性胃腸炎

ウイルス性胃腸炎はウイルス感染によって生じ、原因となる主なウイルスにはノロウイルスやロタウイルスなどがあります。主に感染者の便や嘔吐物に含まれるウイルスによって感染し、短期間に感染が広がりやすく、集団感染が起こることがあります。吐き気や嘔吐、下痢、腹痛、発熱などの症状が急激に起こりますので、そうした症状がある場合には感染を広げないための適切な対策も重要になります。

※当院ではノロウイルスの検査は施行しておりません(一部を除いて保険診療での実施が認められていないことや、ノロウイルスと判明しても治療法が変わらないためです)

細菌性胃腸炎

細菌性胃腸炎は、細菌に感染して生じる胃腸炎であり、一般的には食中毒と呼ばれています。カンピロバクター菌、サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌(O157など)、腸炎ビブリオ菌、黄色ブドウ球菌といった細菌が原因となって生じます。

カンピロバクター菌、サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌(O157など)

発熱と嘔気、腹痛が出現します。解熱したあたりから、強い腹痛を伴う下痢を繰り返すのが特徴です。強い腹痛が断続的に続くのも特徴です。血便を認めることもあります。
鶏肉、牛生レバー、井戸水、卵などが原因となります。

腸炎ビブリオ菌

海産物(魚介類の刺身、すし類など生もの)が原因となります。腹痛、水様便、発熱の症状が出現します。特に、水様便、下痢が何度も継続します。潜伏期が比較的短いことや、夏に多いことが特徴です。

黄色ブドウ球菌

特定の食材ではなく、不衛生な調理環境や調理手順が原因となります。腹痛、水様便、発熱の症状が出現します。特に、嘔気、嘔吐が強く出ます。潜伏期がかなり短いこと(数時間)や、夏に多いことが特徴です。

感染性胃腸炎の検査

血液検査

感染性胃腸炎では、何度も下痢をしたり、発熱で発汗し、脱水が進行します。また、それに伴い、電解質(ナトリウムやカリウム)のバランスが崩れます。脱水や電解質(ナトリウムやカリウム)、炎症反応の評価をします。また、感染性胃腸炎以外の病気の可能性も調べるため、肝臓や腎臓の値もチェックします。

腹部レントゲン検査/腹部CT検査

腹部レントゲン検査/腹部CT検査腹部CT検査では腸の浮腫(むくみ)など炎症の程度や範囲、腹水の有無を評価することができます。感染性胃腸炎と思っていても、他に重篤な病気が隠れていることがあるので、感染性胃腸炎以外の症状があったり、症状が強い場合や、長く継続する場合には積極的に施行します。腹部CT検査は提携医療機関で施行します。

胃・大腸カメラ検査

胃・大腸カメラ検査血便をきたしている場合や長く症状が継続する場合には必須の検査です。胃・大腸の粘膜を直接観察して炎症の程度や範囲を評価できます。感染性胃腸炎と思っていても、潰瘍性大腸炎や大腸がんが隠れていることがありますので、しっかり調べることが重要です。感染性胃腸炎のピークに施行すると痛みが強いため、症状が落ち着いてから、行うことが一般的です。
(当院の胃・大腸カメラ検査は、専門医が麻酔(鎮静剤)を用いて質の高い内視鏡検査を行っております。)

便培養検査

細菌性胃腸炎では便の細菌検査を施行し、原因菌を検索することがあります。

検査でウイルスを特定する必要はあまりない?

一般的に医療機関で特定のウイルスを検査することは、あまり重視されていない場合が多いです。これは、一部の例外を除いて保険診療で認められていないことや、感染性胃腸炎の治療方法が原因によって大きく変わることが少ないためです。また、原因となるウイルスに関係なく、しっかりとした感染対策を行うことが大切です。この感染対策を徹底することで、人から人への感染を効果的に防ぐことができます。

治療

治療感染性胃腸炎の最大の治療は、脱水を防ぐための水分補給です。また、電解質(塩分)も同時に取ることが重要です(経口補水液(OS-1)、スポーツドリンク、スープ)。
特に嘔吐を伴う場合は脱水が進みやすいので注意が必要です。
電解質の入った経口補水液(OS-1)やスポーツドリンクなどで十分な水分を補給し、お粥など消化しやすいものを食べ、安静を保ってください。脱水が進行すると入院加療が必要となりますので、積極的な水分補給をしましょう。嘔吐を繰り返すなど水分補給が十分にできていない場合は制吐薬の投与が必要となりますので、速やかに医療機関を受診してください。

お薬(薬物療法)は、腸内フローラの状態を整える整腸薬、吐き気止め、胃薬(胃酸を抑える薬)、痛み止めなどの処方を行うことがあります。ただし、感染性胃腸炎では安易に下痢止めを処方することはありません。下痢止めを服用すると病原体や病原体が作りだした毒素の排出が遅れて重症化する可能性がありますので、必要がある場合も慎重に見極めて処方されます。
なお、細菌性胃腸炎の場合には抗生物質による治療で効果が期待できます。症状が軽い場合には抗生物質を使う必要がないケースもありますが、症状が強く細菌性胃腸炎が疑われる場合には抗生物質を処方しています。
ウイルス性胃腸炎には抗生物質の効果はありませんので、症状を緩和する対症療法を中心とした治療を行います。急性期に適切な治療を受けて改善した場合は良好な経過が期待できますが、放置していると脱水や合併症発症のリスクが上昇します。疑わしい症状がある場合には早めにご相談ください。

感染性胃腸炎の注意事項

★5日以上継続する 
★強い痛みが継続する 
★強い背部痛がある
⇒胃腸炎以外の疾患も考えられ、大腸カメラ、CT検査が必要です

★水分が全く取れない 
★尿が出ない 
★動けない
⇒重症と考えられ、入院加療も検討となりますので、救急を受診しましょう

食事について

まずは、胃腸をしっかり休めましょう。食欲がない間は、無理して食べる必要はありません。水分と塩分をしっかり取ることが最優先です。ポカリスエットだけでは塩分不足になるので、経口補水液(OS-1)やスープなども飲みましょう。食欲が戻ってきたら、徐々に、おかゆやうどんから再開してください。刺激物、油物、アルコール、たばこは禁止です。

胃腸炎の豆知識

  • 食中毒は、一緒に食事をした人が感染していなくても自分だけ感染していることもあります
  • 多くの場合、発症まで2-7日程度かかります。1週間前までの食事を思い出してみましょう
  • 下痢止めは、発症早期に使用すると悪化するとされます。(生活や仕事で、どうしても必要な方のみ必要最小限に使用してください。)
  • 細菌性食中毒(病原性大腸菌(O157など)、カンピロバクター、サルモネラなど)の場合、血便が出ることもあります
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