高尿酸血症と痛風について
高尿酸血症とは、血液中の尿酸濃度が高い状態が慢性化する疾患です。
多くの場合は自覚症状がなく経過しますが、そのまま放置すると、尿酸が関節内に針のような結晶として沈着し、「痛風」と呼ばれる強い炎症反応を引き起こすことがあります。
ただし、高尿酸血症がもたらす影響は痛風発作だけではありません。
腎機能に負担をかけて腎疾患や尿路結石を引き起こしたり、尿酸結晶が動脈に炎症を起こすことで動脈硬化の進行を招き、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞などの深刻な疾患に繋がる恐れがあります。
「尿酸値が高い」と指摘された方は、放置せず定期的な検査や治療を受けることが大切です。
高尿酸血症を引き起こす原因
この疾患は、体内で尿酸が過剰に作られたり、腎臓からの排泄が不十分になったりすることで起こります。特に、アルコールの過剰摂取やプリン体を多く含む食品(レバー・魚卵・干物など)の摂りすぎは、尿酸値の上昇に直結します。
また、代謝の異常や腎機能の低下がある場合も、リスクは一層高くなります。 なかでも30〜60歳代の男性や、閉経後の女性は注意が必要です。
女性ホルモンの一種「エストロゲン」には尿酸の排泄を促す働きがあり、閉経によってその分泌が減少することで、女性でも痛風のリスクが高まります。こうした背景からも、高尿酸血症を早期に把握し、生活習慣の見直しと併せて定期的な診察を受けることが推奨されます。
痛風について
痛風は、体内に蓄積された尿酸が結晶化し、関節や周辺組織に沈着することで発症する疾患です。
特に手足の関節に痛みが生じやすく、その痛みは非常に強く突然現れるのが特徴です。発作は飲酒やストレス、激しい運動などが引き金となることが多く、症状がない時期にも「痛風結節」と呼ばれるしこりが現れることがあります。
痛風の症状と経過
痛風は、次の4つの段階に分けられます。
無症状期
尿酸値は高いものの、自覚症状はなく見過ごされやすい時期です。
急性痛風発作期
最初の発作は、夜間に突然起こることが多く、特に足の親指の付け根(第1中足趾関節)に、赤み・腫れ・熱感・激しい痛みが現れます。発作は通常1週間ほどで自然に軽快します。
間欠期
発作が治まった後の症状がない期間で、次の発作までの間隔は個人差があります。
無症状ですが、体内では尿酸の蓄積が進んでいる場合もあります。
慢性痛風期
発作を繰り返すうちに慢性化し、関節以外にも全身に痛風結節が現れたり、腎臓の機能が障害されて「痛風腎」や尿路結石を発症することがあります。
尿路結石について
尿酸が結晶化して腎臓や膀胱に蓄積すると、やがて尿の通り道である尿路にも石ができるようになります。
その結果、血尿や強い痛みが現れます。
高尿酸血症の治療方法
血清尿酸値は血液検査で測定できます。ただし、尿酸値を急激に下げると痛風発作を誘発しやすいため、治療では時間をかけて徐々に数値を下げていくことが重要です。
食事療法
尿酸値のコントロールには、まず適正体重の維持や減量を意識することが欠かせません。
飲酒は尿酸値上昇の大きな要因ですが、スナック菓子や甘いスイーツも影響します。
さらに、レバーや魚卵などプリン体を多く含む食品は摂りすぎないよう注意が必要です。
ビールはプリン体が多いことは広く知られていますが、実際にはアルコールそのものが尿酸値を上げる要因になるため、ビール以外のアルコール飲料も控えることが望まれます。
運動療法
健康のために運動は有効ですが、急激で激しい運動はかえって尿酸値を急上昇させ、痛風発作のきっかけになることがあります。
特に減量を目的に無理な運動を始めるのは危険です。
必ず医師に相談し、指示された強度・頻度を守りながら、継続可能な運動を行うことが大切です。
薬物療法
薬物療法は、血清尿酸値を6.0mg/dL以下に下げることを目標とします。
数値が目標に到達した後も、体内に残った尿酸結晶がしっかり排出されるまでは治療を続ける必要があります。
処方される薬剤には以下の種類があります。
- 尿酸排泄促進薬:ベンズブロマロン(ユリノーム)、ドチヌラド(ユリス)
- 尿酸生成抑制薬:アロプリノール(ザイロリック)、フェブキソスタット(フェブリク)、トピロキソスタット(トピロリック/ウリアデック)
ただし、尿酸値を急激に下げると痛風発作を起こす危険があるため、少しずつ慎重に下げていくことが重要です。 当院では、尿酸値の状態だけでなく、患者様の全身の健康状況を考慮しながら、最適な治療を進めてまいります。



