高血圧について
血圧は、本来、気温の変化・運動・精神的な緊張などによって一時的に上下しますが、高血圧とはこの変動とは関係なく、持続的に血圧が高い状態が続いていることを指します。
診察室での測定値で140/90mmHg以上が高血圧とされますが、家庭で測定した場合の基準値は135/85mmHg以上です。
これは、自宅ではリラックスした状態で測定できるため、診察室よりもやや低めの数値が基準とされているためです。
高血圧が進行すると、血管や心臓への負担が増し、脳卒中や心筋梗塞といった重篤な合併症のリスクが高まることが知られています。
そのため、高血圧と診断された場合は、早期に治療を開始し、適切に血圧を管理することが重要です。
高血圧を引き起こす原因
血圧とは、心臓から送り出された血液が血管の壁に加える圧力のことを指します。
心臓が収縮する際に最も高くなり、拡張時には最も低くなります。体内の血液量が増えたり、血液が粘性を増して流れにくくなったりすると、血管にかかる圧力が強くなり、結果として血圧が上昇します。
高血圧の状態が続くと、血管は慢性的に強い圧力にさらされ、やがて柔軟性を失って動脈硬化を引き起こし、さらに血圧が上がるという悪循環に陥ります。
高血圧の発症には、様々な要因が関係しています。遺伝的な素因に加えて、偏った食生活や運動不足といった生活習慣、さらには加齢も大きな影響を及ぼします。
特に塩分を摂りすぎると、体は血中の塩分濃度を薄めようとして水分を溜め込み、血液量が増えることで血圧が上がりやすくなります。さらに、過食や食物繊維の不足、栄養バランスの乱れは、血液の粘度を高め、高血圧の発症や進行の一因となります。
また、過度な飲酒や連日の飲酒習慣も血圧の上昇に関与しており、喫煙は血管を収縮させることで血圧を高める要因になります。
運動不足によって血流が滞ると、それもまた血圧上昇に繋がります。
さらに、精神的なストレスも見逃せない要素です。ストレスは自律神経の働きを乱し、血流調整のバランスが崩れることで高血圧を引き起こしやすくなります。
なお、特定の病気や服用している薬剤が原因で高血圧になるケースもあります。こうした背景を踏まえて、生活習慣の見直しや定期的な健康管理が重要です。
高血圧の種類
高血圧は、大きく分けて「本態性高血圧」と「二次性高血圧」の2つのタイプに分類されます。
本態性高血圧は、特定の病気が原因ではなく、主に生活習慣や体質が関係して発症するタイプです。
塩分の摂りすぎや肥満、喫煙、過度な飲酒、運動不足、精神的ストレスなどの環境要因に加えて、高血圧になりやすい遺伝的体質が関与していると考えられています。日本人の高血圧の大半はこのタイプに該当します。
一方、二次性高血圧は、明らかな原因となる病気が存在するタイプで、例えば腎血管の異常による腎血管性高血圧や、睡眠時無呼吸症候群などが挙げられます。これらの場合は、基礎疾患の治療が不可欠となります。
高血圧の主な症状
高血圧は、自覚症状が乏しいまま進行することが多く、数値が高くても本人が異変を感じないケースも少なくありません。そのため、知らないうちに悪化していることもあり注意が必要です。
血圧が非常に高くなると、頭痛、めまい、息切れなどの症状が現れることもありますが、そうした症状が出る前の段階で早めに受診し、治療を始めることが重要です。
高血圧の検査・診断方法
血圧は日内変動があり、朝と夜とで数値が変わるほか、緊張や運動などによっても一時的に上昇することがあります。
このため、医療機関で1回だけ血圧を測定した結果だけでは、正確に高血圧かどうかを判断できないこともあります。
そのため、日常生活の中でご自宅にて定期的に血圧を測定・記録して頂き、それをもとに総合的に判断します。
また、高血圧と診断された場合には、
その背景に病気が潜んでいないかを確認する必要があります。
二次性高血圧の可能性を調べるために、血液検査や超音波検査などを実施し、必要に応じてさらに詳しい検査を行うことになります。
高血圧の治療方法
高血圧が持続すると、血管への過剰な圧力が動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳卒中といった重篤な合併症を引き起こす恐れがあります。そのため、血圧を適切な範囲に下げる治療が重要です。
治療の中心は、降圧薬による薬物療法と、日常生活の見直しによる生活習慣の改善です。
なお、「二次性高血圧」と診断された場合には、まず原因となる疾患の治療が優先されます。
近年では、3種類以上の降圧薬を服用しても血圧がコントロールできない「難治性高血圧」が増加していますが、その多くは二次性高血圧の精査が行われていないことが背景にあります。
心当たりのある方は、お気軽にご相談ください。
二次性高血圧と診断されたり、難治性高血圧で管理が困難な場合、提携している高次医療機関へご紹介することもあります。
生活習慣の改善
塩分の摂取制限
塩分を多く摂ると、体は濃度を調整しようとして水分を保持し、血液量が増加します。血液量の増加により血圧も上昇するため、塩分の摂取量を抑えることが血圧管理に直結します。
日本高血圧学会では、1日の塩分摂取量を6g未満とするよう推奨しています。
食品そのものにも塩分が含まれているため、調味料として使用する塩分は3g未満に抑える必要があります。ソーセージ、ハム、干物、漬物、インスタント食品、スナック菓子などは塩分が多く含まれており、摂取量が基準を大幅に超えることもあるため、できるだけ控えましょう。
減塩に慣れるまでは物足りなさを感じるかもしれませんが、出汁や酢、レモン、スパイス、香味野菜、ハーブなどを活用すれば風味豊かな食事を楽しむことができます。また、塩味の強い料理を1品に留め、他のメニューを酸味や甘味で構成することで、メリハリのある献立が可能になります。
適正体重の維持
生活習慣病の予防・進行防止のためには、標準体重を維持することが効果的です。標準体重は以下の式で求められます。
標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
このときのBMI(体格指数)が22となるのが理想です。BMIが25以上は肥満、18.5未満は低体重とされ、いずれも健康リスクが高くなります。また、体重の急激な増減がある場合には、甲状腺疾患や糖尿病などの可能性もあるため、早めに受診するようにしましょう。
アルコールの適量摂取
アルコールの摂取は1日25g以下が目安です。これはビールなら500mL、日本酒なら1合に相当します。前日に飲酒を控えたとしても、翌日に摂取して良い量が増えるわけではありませんので、日ごとに適量を守ることが重要です。
運動の習慣化
軽く汗ばむ程度の運動を継続的に行うことで、高血圧の改善が期待できます。運動には、肥満の解消や血流の改善、筋力・骨の強化、呼吸機能の向上といった多くの健康効果があり、ストレスの軽減にも効果的です。
なお、膝や腰のトラブル、高度の高血圧、心疾患などがある場合には、運動内容や強度に配慮が必要です。無理のない範囲で、医師と相談しながら継続していきましょう。
禁煙
喫煙は末梢血管を収縮させることで血圧を上昇させ、さらに動脈硬化を加速させます。高血圧のある方にとって、禁煙は治療上不可欠です。喫煙を続けていると、他の生活習慣の改善をいくら行っても十分な効果が得られにくく、モチベーションの維持にも悪影響を及ぼします。
また、喫煙は慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺がんなどの深刻な呼吸器疾患の原因となり、歯周病の悪化にも関与しています。将来の健康のためにも、禁煙に取り組みましょう。



