禁煙外来とは
禁煙外来は、禁煙を頑張りたい患者様のための専門外来です。タバコはあらゆる疾患の原因にもなる嗜好品です。
特に慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)は、長年の喫煙習慣によって発症するケースが多く、悪化を防ぐには禁煙を行う必要があります。
禁煙治療は保険診療になるのか
禁煙治療は自由診療(全額自己負担)として受けることも可能ですが、一定の条件を満たしている場合は健康保険が適用されます。 治療の内容は、自費診療でも保険診療でも同じです。
条件を満たしているかどうかにつきましては、初診時に医師が確認します。
禁煙治療が保険適用となる条件
- ニコチン依存症の疑いを調べるテスト(TDS:Tobacco Dependence Screener)で5点以上取っている
- ブリンクマン指数(1日に吸うタバコの本数×喫煙年数)が200以上で、かつ35歳以上の方
(例)20歳から1日10本タバコを吸っていて、現在40歳になっている方のブリンクマン指数:10×20(40-20)=200です。 - 今からすぐ禁煙治療を受けたいと考えている
- 禁煙治療の説明を受け、説明内容に納得した上で同意書に署名している
ただし、前回受けた治療の初回診察日から1年経っていないうちに禁煙治療を受ける場合は、保険診療ではなく自費診療の対象となってしまいます。
過去に健康保険で禁煙治療を受けた方は事前に、ご自身が過去に受けた禁煙治療の初回診察日を確認してください。
タバコには200種類以上もの有害物質が含まれています
タバコの煙には200種類以上の有害物質と、約50種類以上の発がん性物質が含まれています。がん疾患の中でも特に肺がんと喉頭がんは、喫煙によって発症するがんとしてよく知られていますが、食道がんや胃がん、肝臓がん、膀胱がんなども、タバコが危険因子になると指摘されています。
また、喫煙はCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の発症だけではなく、肺炎や喘息発作を引き起こす原因にもなります。
さらに、タバコには血管を収縮させる成分が含まれているため、高血圧や動脈硬化の発症・進行リスクを上昇させ、脳出血や心筋梗塞などの引き金にもなります。
特に高齢の方がタバコを吸うと、血管の収縮によって歯周病を進行させ、誤嚥性肺炎の発症リスクを高めてしまいます。 このようなリスクから身体を守るために、禁煙は極めて有効だと言えるのです。
疾患の状態によっては、禁煙が必須になるケースもあります。 ただし、喫煙には「ニコチン」という物質が含まれております。ニコチンには、身体に快感をもたらす作用があり「頭がすっきりする」「気持ちがホッとする」「リフレッシュできる」といった依存性もあります。
この依存性から逃れられずに「喫煙を止めたいのに止められない」と悩む方や、何度も禁煙しているのに挫折してしまう方は決して少なくありません。
ニコチン依存症は「薬物依存」の一種です。「甘え」ではなく「治す必要のある病気」として考えるようにしましょう。
治療
喫煙歴などをお聞きしてから診断をして、禁煙補助薬などを処方していきます。 処方後は経過観察を行うため、定期的に受診していただきます。
生活習慣の改善などのアドバイスも行っていきますので、どんな些細なお悩みでもお気軽にご相談ください。
ニコチンが含まれていない禁煙補助薬
チャンピックス
バレニクリン酒石酸塩を主成分とする飲み薬です。「ニコチン切れ」による症状として見られるイライラ感や焦燥感などを軽減させる効果を持っています。「タバコが美味しくなくなる」といった効果にも期待できる薬です。 飲み方ですが、禁煙開始予定日の1週間前から服用し始めていきます。
1日に2回、食後にコップ1杯程度の水またはぬるま湯で飲んでください。飲み始めた1週間は喫煙しながら飲み、8日目になりましたら禁煙を始めましょう。
ただし、8日目前から禁煙できている場合は、そのまま禁煙を継続したまま飲み始めても大丈夫です。 服用期間はだいたい12週間程度で、自己判断で服用を中止せず、医師の指示に従って飲んでください。 副作用として不眠症や頭痛、吐き気などの症状が現れることもあります。
これらの症状が見られた際は、服用を一旦止めて当院へご相談ください。
ニコチンが含まれている禁煙補助薬
ニコチンパッチ
ニコチンが含まれている貼り薬です。お肌に直接貼ることで、皮膚から徐々にニコチンを吸収させていきます。タバコを吸うと200数類以上の有害物質が体内へ取り込まれてしまいますが、ニコチンパッチはニコチンしか含まれていないため、タバコよりも安全性は高いです。
病院から処方されるニコチンパッチもありますが、市販品もあります。 使い方ですが、1日1回、上腕やお腹または腰背部などにニコチンパッチを貼っていきます。
長時間同じところに貼り続けると皮膚のかぶれが起きやすくなるため、毎日違う場所に貼ることを推奨します。また、1日2枚以上貼ると過剰にニコチンを摂取してしまうため、必ず「1日1枚」のルールを守って使用してください。
またニコチンパッチを貼った状態でタバコを吸ったりニコチンガムを噛んだりすると、吐き気やめまい、腹痛などの副作用が現れやすくなります。
危険ですので、喫煙と禁煙補助薬の併用は絶対に避けてください。
ニコチンガム
ニコチンが含まれているガムです。ドラッグストアでも販売されているガムで、噛むとニコチンが口の粘膜から血液へ吸収されていきます。1回の使用量は必ず1個にして、噛む数を少しずつ減らしていきます。
ニコチンパッチと同じように、有害物質はニコチンしか含まれていません。主な副作用としては、吐き気、頭痛、のどの痛み・刺激感、胸やけ、めまいなどが挙げられます。
普通のガムとは噛み方が異なる医薬品ですので、必ず用量・用法を守って噛んでください。
正しい噛み方を心がけると効果が得られやすくなり、使い方を誤ると副作用が現れやすくなります。